消防活動の紹介
私たちは、地域住民の皆様をはじめ当地域を訪れる皆様の安心・安全のため、24時間365日、交替勤務で任務にあたっています。その代表的な活動について紹介します。
消火活動
■消防隊とは
消防隊は消防法令により定められた基準に則って編成された部隊で、火災のときの消火や色々な災害の被害軽減などに出場します。北アルプス広域消防本部では各署に配備されています。
■消防隊の装備
消防隊は火災現場で炎や熱から身体を守るために防火衣を着装します。防火衣は非常に燃えにくい素材で作られており、
防火ヘルメットの「しころ」にも使用されています。しころは首周りを保護しています。
さらに、火災で発生する有毒ガスや煙から身体を守るために空気呼吸器も着装します。空気呼吸器は背中のボンベに入っている空気を吸い、呼吸を保護する器具です。装備の合計は10kgを超えます。
■消防隊の資機材
(1) 消防用ホース、管そう
火災現場で放水をするための器具です。ホースの長さは20mあり、先端は消防用ホースや管そう・消火栓などが結合できるようになっています。
消防用ホースにはいくつかの口径がありますが、北アルプス広域消防本部では主に65mmと50mmホースを使用しています。
管そうは水道の蛇口のようなもので消防用ホースの先端に接続するものです。管そうには色々な種類があり、放水している水の形を変えられるものもあります。また、薬剤と水を混ぜて泡を放射できるタイプの管そうもあり、油火災や自動車火災などで使用されます。
(2) 照明器具
夜間の火災だけでなく地階や屋根裏など、現場で安全に活動できるよう各種の照明器具が用意されています。
(3) 消防用ロープ、三連梯子
消防用ロープは隊員の命綱や逃げ遅れ者の救出、道具の搬送など色々な用途に使用されます。消防用ロープは色々な長さのものが用意されており、
用途に応じて使い分けられます。
三連梯子は3m弱の梯子が入れ子状に三つ重なった伸縮梯子なので三連梯子と呼ばれています。梯子についているロープを引くことにより梯子が伸びます。長さは最大8.7mで、自由に長さを調節できます。
消防ではこの三連梯子とロープを組み合わせた色々な救助方法があります。現場では、限られた資機材の中で色々組み合わせてあらゆる状況に対応します。
■出動車両
消防隊として出場する車両は主に消防ポンプ自動車及び水槽付消防ポンプ自動車で、人命救助・延焼防止を主眼に消火活動を実施します。また火災の規模や形態に応じ、救助工作車やはしご付消防自動車、救急車なども出動します。
火災現場に潜む危険
火災現場ではいくつもの危険が潜んでいます。その多くは命に関わるものが多く、火災現場での気のゆるみは命の危険に直結します。その中からいくつかを紹介します。
(1) 一酸化炭素中毒
火災現場では空気中の一酸化炭素濃度が増加します。一酸化炭素は火災の不完全燃焼に伴って発生しますが、一酸化炭素自体は無臭ですのでその存在は分かりません。
一酸化炭素は、酸素の運搬役であるヘモグロビンとの結合力が非常に強いため血液中の酸素量が低下して、最悪の場合、意識を失い自力で行動できなくなります。
(2) フラッシュオーバー
急激な拡大燃焼で、「火災によって発生した熱が、室内に蓄積され、家具・内壁等の可燃物が加熱されて燃焼しやすい状態となり、室内全体が一度に燃えだす現象」
と定義されています。火災初期に現れやすい現象で、室内に充満した可燃性ガスが一気に燃え上がる現象です。室内温度も一気に上がり約1,100度まで上昇します。火災初期で最も気をつけなければならない現象のひとつです。
(3) バックドラフト
映画化されて有名になった現象です。「火災により酸素が欠乏し、高温の可燃性ガスが蓄積している閉鎖された区画に、酸素が取り入れられて発生する爆発的燃焼現象」
と定義されています。区画がしっかりとした、気密性の良い、ある程度の広さをもった部屋で発生しやすいと言われています。そのような火災で不用意にドアを開放すると爆発的な猛火に襲われてしまいます。同名の映画をご覧になるとよくわかると思います。
救助活動
■救助隊とは
救助隊とは消防法令により定められた人命救出の専門部隊です。高度な資機材を用い、自力では生命危険から脱出できない人を安全な場所まで救出します。オレンジ色の服が特徴です。
北アルプス広域消防本部では大町消防署と北部消防署に配属されています。
■救助隊の装備
救助隊は、交通事故や火災、高所や低所といった落差を伴う現場、水難事故など、あらゆる現場へ出動し最前線で活動するため色々な装備を装着します。
■救助隊の資機材
救助隊は数多くの資器材を駆使して救助活動を実施します。その中から代表的なものをいくつか紹介します。
(1) 大型油圧救助器具
可搬エンジンに連結された油圧ポンプで発生させた油圧の力で作動させます。主に車両事故などで車外に出られなくなった場合に使用されます。
スプレッダーは大きなペンチのような器具で、潰したり拡げたりできます。カッターは大きなはさみで鉄などを切ることができます。
(2) 画像探索機
端に取り付けたカメラやマイクで瓦礫の中などに取り残された人を発見する器具です。防水構造で水中の探索も可能です。画像は手元のモニターに映し出され、カメラの先の人と会話することもできます。
カメラなどを取り付ける棒は6mまで伸びます。
(3) 救命ボート
空気充填式のゴム製のボートです。空気充填式ですのでどこにでも持ち運びができ、8人まで搭乗できます。船体後部に船外機を装着することもでき高速移動も可能です。
船体はいくつかの気室に分割されており、軽度の損傷なら浮力を保つことが可能です。
■救助隊の車両
救助隊が主に搭乗する車両は、救助工作車、はしご付消防自動車、多目的積載車があります。どの車両も多くの器材が装備されており、自動車を機材として使用します。
救助工作車には照明装置、ウィンチ装置、クレーン装置、超高圧噴霧消火装置が設置されており、はしご付消防自動車には30mのはしごが、多目的積載車には照明装置が装備されています。
 メタルハライド照明装置 |
 小型移動式クレーン |
 超高圧噴霧消火装置 |
■救助技術大会の紹介
消防救助技術の向上を目指し、毎年救助技術大会が開催されています。大会は県救助大会を始め、全国大会まであり日頃の技術練磨の成果を発表します。
北アルプス広域消防本部でも毎年出場しており、日頃の訓練成果を発揮しています。
 ロープブリッジ渡過 |
 引揚げ救助 |
 ロープブリッジ救出 |
救急活動
■救急隊とは
救急隊とは消防法令により定められた救命活動を専門とする部隊です。高度な救命器具を用い、傷病者に最も適した病院まで搬送します。
中でも救急救命士の資格を持つ隊員は、医師の指示を受けながら高度救命処置を施すことができる、まさに救命のスペシャリストです。北アルプス広域消防本部では各署各隊に救急救命士が配属されています。
■救急隊の装備
救急隊が活動する現場では、手当のため傷病者の血液や体液、飛沫に触れることがあります。このため、出動時には感染防護衣、手袋、マスク等を着用して現場に向かいます。
感染防護衣等は、細菌やウィルスから隊員を守ります。隊員自身を防護することで、他の傷病者に感染を広げないよう細心の注意を払っています。
■救急隊の資機材
(1) 自動体外式除細動器(AED)
心肺停止状態の人に対して電気ショックを行い、心臓の動きを元に戻すための器具です。人が急に倒れて反応が無く普段どおりの呼吸も無い場合、心臓と呼吸が止まっている(心肺停止)状態が強く疑われます。
多くの場合、心臓が痙攣しているような状態がしばらく続きますが、その間に電気ショックを行うことで正常な動きに戻ることがあります。電気ショックが必要かどうかはAEDが判断しますので、救急隊だけでなく誰でも安全に使用することができます。
救急車以外の設置場所はこちらで確認できます。
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写真左奥から、電動吸引器、AED、 患者監視装置(多機能モニタ) モニタ下段は自動式人工呼吸器 |
(2) 酸素吸入器、携帯酸素吸入器
人体は、睡眠中も休むことなく呼吸を続け体内に酸素を取り込んでいます。しかし、病気やけがで酸素の取込み能力が低下すると様々な障害が現れ、重度になると生命が危険に晒されます。
救急隊はその徴候をいち早く発見し、必要であれば酸素吸入を施します。これらはそのための器具で、救急車に備付けのものと持ち運びができるタイプがあります。酸素吸入器は救命には欠かせない器具です。
 救急車備付けの酸素吸入器 |
 携帯型の酸素吸入器 |
 酸素投与を受ける傷病者 |
(3) バックボード
交通事故や転落等によるけがの場合、脊椎(骨)と同時に脊髄(神経の束)を損傷していることがあります。その場合、不用意に動かすと悪化したり後遺症を残すことになりかねません。
救急隊は、脊髄損傷の可能性がある傷病者に対して、バックボードを使用した全身固定を行ったうえで搬送します。この処置は標準化された方法で行い、場合によってはスクープストレッチャーと呼ばれる器具を用いることもあります。
■救急隊の車両
救急隊は基本的に3名編成で救急車に搭乗します。救急車には普通の救急車(2Bタイプ)と高規格救急車があります。高規格救急車は普通の救急車に比べ高度な救命資器材が搭載されており、室内も広くなっています。
北アルプス広域消防本部では、運用している5台の救急車すべてが高規格救急車仕様となっています。また、当消防本部が全国に先駆けて導入している「再帰性に富んだ反射材」を用いた「バッテンバーグマーキング」や「シェブロンマーキング」については
こちらのページもご覧ください。
■ドクターヘリとの連携
長野県では平成17年(2005年)から信州ドクターヘリ運行を開始し、平成23年(2011年)からは2機体制で広大な県域をカバーしています。信州ドクターヘリは基本的に消防からの要請に基づき出動しますが、その要請基準は
救急隊が現場で判断する場合と、皆様からの119番通報の内容で判断する場合の2通りがあります。後者の場合は、救急車とドクターヘリがほぼ同時に出動するため、最短で医療処置を受けることができ、重症化の軽減や救命率向上が期待できます。
北アルプス広域消防本部では年間100件前後の要請を行い、必要な方が早期に高度医療を受けられる体制を目指しています。
緊急消防援助隊
■緊急消防援助隊とは
緊急消防援助隊は阪神淡路大震災を教訓に整備された広域応援体制のことです。大規模な災害が発生した場合、総務省消防庁長官の要請で都道府県単位で部隊が編成され、いち早く被災地へ出動します。このとき、北アルプス広域消防本部は長野県に属しますので、長野県緊急消防援助隊として他都道府県に出動します。
北アルプス広域消防本部では現在、消火隊、救助隊、救急隊に登録されています。
■活動実績
北アルプス広域消防本部では制度制定以来、計6回の応援出動をしています。活動内容は次のとおりです。
【平成16年7月 新潟・福島豪雨災害】
平成16年7月に新潟・福島両県で発生した豪雨災害に出動。北アルプス広域消防本部は救助隊として出動し、新潟県見附市・三条市へ展開。救助ボートにて計100人を救出しました。
 孤立集落からの救助 |
 見附市での救助活動 |
 長野県隊の集結風景 |
【平成16年7月 福井豪雨災害】
平成16年7月に福井県で発生した豪雨災害に出動。北アルプス広域消防本部は救助隊として出動し、福井県福井市へ展開。現場到着後、救助事案が解決し、活動なし。
 早朝準備をする救助隊員 |
 隊長ミーティング |
 解散式に集結する隊員 |
【平成16年10月 新潟県中越地震】
平成16年10月に新潟県中越地方を襲った地震災害に出動。北アルプス広域消防本部は救助隊として出動し、新潟県小千谷市・長岡市へ展開。長岡市妙見町にて発生した土砂崩落現場で行方不明家族3人の捜索・救助活動に従事しました。
 妙見町の現場付近 |
 通路を確保する救助隊員 |
 野営地の様子 |
【平成23年3月 東日本大震災】
平成23年3月11日に発生した東日本大震災では長野県北部でも甚大な被害が発生しました。北アルプス広域消防本部は総務省消防庁からの指示により、
第1次派遣隊から第6次派遣隊及び資機材支援隊、撤収隊計8隊40名を派遣し、多賀城市、塩竃市、名取市で活動しました。
 惨状を見つめる隊員 |
 ボートによる捜索 |
 多賀城市での活動 |
【令和3年7月 伊豆山土砂災害】
令和3年7月3日に発生した静岡県熱海市伊豆山地区の土砂災害に出動。北アルプス広域消防本部は、長野県隊として延べ4隊20名を派遣しました。
【令和6年1月 令和6年能登半島地震】
令和6年1月1日に能登半島で発生した最大震度7の地震災害に出動。北アルプス広域消防本部は長野県隊として延べ20名を派遣し、石川県珠洲市にて13日間の活動を行いました。
 珠洲消防署で待機中 |
 高齢者の搬送が中心 |
 長野県大隊の集結 |
長野県消防相互応援隊
■長野県消防相互応援隊とは
県内で大きな災害が発生した際に、消防相互応援協定により長野県内の消防本部から応援隊が出動し、他の消防本部と協力して救助活動や消火活動にあたります。緊急消防援助隊が全国的な枠組みであるのに対し、
消防相互応援隊は県内あるいは隣接する消防本部がお互いに応援する協定です。
■活動実績
北アルプス広域消防本部の近年における活動実績は次のとおりです。
【平成26年9月 御嶽山噴火災害】
平成26年9月27日に御嶽山で発生した噴火災害に出動。北アルプス広域消防本部からは、消防隊・救急隊・支援隊として15次隊まで、延べ77名を派遣し、
木曽広域消防本部管内の通常業務の支援、自衛隊ヘリコプター支援、捜索活動を行いました。
翌平成27年7月29日から9日間にわたる行方不明者の再捜索活動では、延べ27名を派遣しました。
【令和元年10月 令和元年東日本台風(台風第19号)災害】
令和元年10月12日から13日にかけて発生した台風被害に出動。北アルプス広域消防本部から救急隊、救助隊、後方支援隊として4次隊まで延べ13隊40名を派遣しました。
当本部の救助隊はボートによる救出や各戸の安否確認、救急隊は老人ホームや被災病院から計4名の搬送を行いました。
 ボートによる救助 |
 被災病院にて |
 他機関との連携 |
 安否確認 |